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民法改正 どうなる債権譲渡? どうなるファクタリング?
こんにちは。ファクタリング受付担当です。
今回は6月に公布された改正民法について書いていきたいと思います。
2017年6月2日に民法改正法案が交付されました。
(官報(号外第116号))
3年以内に施行される予定なので、2020年6月までには施行されます。
2020年1月施行の可能性が高いのではないかという見方が多いです。
そんな改正民法の中で、ファクタリング契約において切っては離せない譲渡禁止債権の取扱いも変更されたので、今回ブログで変更点や問題点など考えていきたいと思います。
■120年ぶりの民法大改正!どこが変わったの?
(1)消滅時効の時効期間
☆ポイント:原則「知った時から5年」に統一
これまで業種ごとに時効は異なっていました。例えば…
- 商事債権:5年
- 診療報酬:3年
- 工事請負代金:3年
- 売掛代金債権:2年
- 運送費:1年 などなど…
これらがまるっと「知った時から5年」に統一されるのでシンプルになります。
通常、仕事として上記の債権が発生するので、知らなかったから時効じゃないというのは通用しませんよね
ですので、債権を請求できる時から起算して5年と考えた方が良いでしょう。
(2)個人根保証契約の極度額
☆ポイント:保証限度額の定めがないと無効
これまで、貸金等に関する根保証は、保証人の保証債務の範囲に際限がなくなってしまうため、極度額の定めがないと無効とされていました。改正後は、貸金等に限らず家賃なども極度額の定めが必要になります。
法人間の継続契約などで、代表者の個人保証が必要になる場合がありますが、この場合も極度額の定めがないと無効になります。
(3)事業のための貸金債務についての個人保証の制限
☆ポイント:公正証書で保証の意思の確認が必要
例外)主債務者が法人で代表者が保証人になる場合は、これまで通り公正証書でなくても有効となります。主債務者と密接な関係を有する者としてこの制限から外れています。
(4)法定利率の変更
☆ポイント:5%から3%になる。
利息が発生すると定められているけれども利率が定められていなかった場合や遅延損害金の利率が定められていなかった場合、民法の法定利率が適用されます。これまでこの法定利率は5%と定められていましたが、民法改正後は3%に変更されます。ちなみに、これまで会社間の取引は、商事法定利率で6%となっていましたが、民法改正と同時に商事法定利率は廃止され、会社でも個人でも3%となります。
(厳密に言うと、会社間の取引は、利息の定めがなくても利息は当然に発生します。一方又は双方が個人の場合は利息の定めがないと利息は発生しません)
(5)約款に関すること
☆ポイント:消費者に一方的に不利益な約款は無効になる。
約款とは、簡単に言うと商品を購入したりサービスを利用したりするときに消費者が同意する契約条項や免責事項などのことです。通販などを利用するとき、約款を全部読んでから同意する方ってどれくらいいるんでしょう?多分ほとんどの方が読んでいないですよね(;^_^A 私もですm(__)m
この約款について、基本的な内容はこれまでと変わらないのですが、今回の改正で明文化されることになりました。その内容をかいつまんで説明すると、「消費者が内容を理解していなくても事前に示していれば有効とする」けれど、「消費者が一方的に不利益となるような条項は無効」とするとされています。
(6)債権の譲渡性について
そしてファクタリング契約に直接関係のある債権の譲渡性についての変更です。
こちらについては、以降詳しく書いていきますね。
変更の詳しい内容は下記の法務省ページをご参照ください。
>詳細な解説はこちら
簡単にまとめたPDFも出ておりますのでこちらにご紹介しておきますね。
>PDFはこちら
■譲渡禁止特約がなくなる?「譲渡制限」に変わります。
☆ポイント:譲渡禁止特約があっても、譲渡が有効になる。
ただし、譲受人となる者が譲渡禁止を知っていたりしたら債務者は譲渡人への弁済をもって譲受人となる者に対抗できる。
★ポイントをファクタリングに当てはめると、3者間ファクタリングのケースに当てはまります。ファクタリング会社が譲渡禁止を知っていたり(これを悪意と言います)、知らないとしても知っていたと同視できるような場合(これを「重過失」と言います)、上記の抗弁権が売掛先に認められることになり、売掛先はファクタリングを申し込んだ会社(譲渡人)に通常通り支払えば、ファクタリング会社(譲受人・第三者)に対抗できるということです。
今回の改正でファクタリングへ影響があるのは、3者間ファクタリングの場合ですね。2者間の場合は売掛先には通知しないのでこの問題は発生しにくいと考えられます。
■そもそも譲渡禁止とは?
今回の改正で注目されているのは、「譲渡禁止」の取扱いについてです。
譲渡禁止とは読んで字のごとく、「譲渡」を「禁止」、つまり譲渡してはいけないということです。そもそも譲渡禁止債権を譲渡すること自体が契約違反であるのですが、契約内容を把握しないまま譲渡してしまったり、中には知っていながら譲渡するなど、譲渡禁止債権でも譲渡しているケ ースがあります。
二者間のファクタリングの場合、売掛先(債務者)への対抗要件、及びファクタリング契約の保全の意味で債権譲渡登記をします。そして登記されると「登記概要証明」に『●月●日、株式会社△△にこの債権を譲渡しました』というような内容が記載されます。(実際は下記の画像をご参照ください)
先に登記があると、普通のファクタリング会社なら新たなファクタリング契約をしたがりません。というのも、概要証明を見ても登記されているのは分かるけれど、一体どこの売掛先のいつのいくらの債権が登記されているのか、までは分かりません。(概要証明を見せて番号で照合すれば信用してくれるかもしれませんが・・)ですので、譲渡される売掛金が登記されていないかどうかわからないので、二重譲渡の心配があるわけです。
二重譲渡とは、すでに譲渡している債権を別の会社に譲渡することです。
譲渡契約はできても売掛金は一つしかありませんから、どちらかにしか払えないことになり、払われなかった方は損害を被るわけです。そうすると二重譲渡をした会社に損害賠償請求をしたり、売掛先に請求したり等々、トラブルが起きます。簡単に書きましたが、もっといろいろあります(-_-;)
今回は別の話なので詳細は書きませんが、とにかく譲渡禁止債権を譲渡することは、契約違反でトラブルの元になります。
■登記の優位性 民法改正による影響はあるのか
さて、これまで譲渡禁止とされてきた債権が民法改正により「譲渡制限」債権となりますが、譲渡人や譲受人にどのような影響があるのでしょうか。ファクタリングに関する視点から見ていきましょう。
(主に3者間ファクタリング契約で争点となる可能性があることなので、2者間ファクタリングの場合は通常問題になりませんが、権利関係は3者間も2者間も基本的に変わりませんので、知っておいた方がいいと思います。)
【1】債権の価値が高まる
民法改正後は、改正前に譲渡禁止だった債権に改正法の規定が適用されることになるので、譲渡制限債権とみなされます。 つまり債権をファクタリングや売掛金担保融資(ABL)などの資金調達に活用できる可能性が高まることになります。具体的には、実際の改正法の条文を元に見てみましょう。
【現行法】
(債権の譲渡性)第四百六十六条
1. | 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 |
2. | (A)…前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。 |
【改正法】
(債権の譲渡性)第四百六十六条
1. | (C)当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。 |
2. | 前項に規定する場合には、(D)譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、(E)譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。 |
しかし、次項の「(A) 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。」というところでしっかり譲渡禁止特約の有効性が記されています。続いて「(B)その意思表示は善意の第三者に対抗することができない」とありますが、これは債務者が譲渡禁止の意思表示をしても、それを知らない第三者には譲渡禁止の効力が及ばず、対象債権の権利移転が有効となるということです。ちなみに判例では、単なる善意だけでなく重過失のないことも要件とされています。
これに対し改正法では、「(C)当事者が債権の譲渡を禁止〜したときであっても、債権の譲渡はその効力を妨げられない。」とあり、現行法と逆のことを言っていますね。ただし、「(D)譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ」、「(E)譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる」とあります。これは、譲渡禁止とされた債権を譲渡することはできるけれど、譲受人が譲渡禁止であることを知っていたり、譲受人に大きな落ち度があったために知ることができなかったりした場合は、債務者(売掛先)は譲受人に対しては債務の履行(請求書の代金の支払等)を拒むことができるということです。そして、(E)にあるように、元々の債権者に対して債務を履行すれば、第三者に対抗することができるということになります。
【2】債権の流動性が高まる
前述の通り、譲渡が有効となる債権の幅が広がるため、単純に債権の流動性が高まり、資金調達などに活用しやすくなるため、担保等にする場合の価値が上がるとも考えられます。
とは言え、得意先が大手企業だったりすると、法律が認めているからと得意先との慣習を無視して譲渡制限債権を譲渡して取引を切られたりしてしまったらとても困りますし、債権譲渡による資金調達がすぐにできやすくなるかというと不安が残るのが現実だと思います。ちなみにMEDS JAPANでは売掛先に知られたくないから登記はしないでほしいというお客様からも多く問い合わせをいただいております。ご希望に添えない場合もあるのですが、中には状況をよくご説明いただき2者間・不登記でご契約いただけたこともございますのでご相談ください。
【3】改正前の譲渡禁止 < 改正後の譲渡制限
改正前に交わした契約書で譲渡禁止特約があっても、その効力が法改正後に及ぶ場合、譲渡禁止特約は譲渡制限とみなされます。
債権の流動性が高まることなどは先ほどお伝えしましたが、他にも債権譲渡登記の優劣に関わってきます。通常、登記は早い者勝ちなので対抗した場合先に登記した方の効力が認められます。しかし、譲渡禁止特約付の同一債権を、一方へ改正前に譲渡していて、もう一方へ改正後に譲渡し、いずれの譲受人も譲渡禁止特約について悪意であった場合で登記もしていた場合、後者の改正後の譲受人の登記の効力が認められることになります。これは改正前の譲渡禁止は「禁止」で債権譲渡は無効となるのに対し、改正後の譲渡禁止は「制限」で、債権譲渡は有効となるという流動性の違いがあることからです。
しかし、このように登記の優劣が争われるのは二重譲渡の場合で、債権の譲渡人が債権を二重に譲渡することはそもそも契約違反であるということを忘れてはなりません。
【4】悪質ファクタリング業者に注意
こうした制度や法律が変わる節目には、まだ新制度等が浸透していないことを良い事に悪だくみをする業者が現れしまうのが常です…。こういう時に限ったことではないですが、少し注意力を高めて契約内容など確認した方が良いかもしれませんね。
■まとめ
2020年と言えば、東京オリンピックですね。オリンピック特需があって忙しくなる方も多くなることと思いますが、無理なく資金調達できるようにこうした民法改正に関するニュースにも注目したいですね。
ファクタリングについて分からないことがあれば、お問い合わせだけでもお気軽にどうぞ(^^)/